耳には聴覚と平衡感覚があります。
平衡感覚異常であれば めまいや立ちくらみを、聴覚異常であれば 耳鳴りや難聴が起こります。
人によって聞こえる音の種類や大きさは違いますが、実際には存在しない音が聞こえたり、音が頭に響くように感じたり、または “こもった” ように感じたりする症状です。
想像してみてください。有るはずの無い大きな音が、ずーっと聞こえてくるのです。
この継続的な「耳鳴り」はかなりの精神的な苦痛を伴います。
「頭に響くかん高い音。“キーン”って鳴り続ける。」
「片方だけ耳鳴りが聞こえるんです。」
「耳の中で音がこもっている“ワァ~ンワァ~ン”」
「歳だから仕方ないといわれた。」
「ずーっと鳴ってるので、気になって集中できない。仕事が手に付かない。」
「聞こえる音が “こだまする” のよ。」
「病院で脳の検査をしても異常がない」「一ヵ月半薬を飲んでいるが改善されない」
「この音、何とかならないかな…。何とかしてほしい…。」など。
耳鳴りは体調によって、音の質や大きさが変化する傾向があります。
本来の聴力が耳鳴りにかき消されるようにして、軽い難聴傾向にある方も多いようです。
耳の中が圧迫されているような、耳閉塞感もあります。
また多くの場合、耳鳴りは突然始まることが多いですが、「 いつからだかはっきりしない。気が付いたら聞こえていた…。だんだん大きくなっているようだ…。」 という方もおられます。
がしかし、異常の無いほとんどの方も 「耳鳴り」 を知っています。
良~く耳を澄ましてみてください。
集中すればごくかすかに 「 キ~ン 」 もしくは 「 シ~ 」 という音を聞くことが出来ます。
よく漫画などで静けさを表現するときに 「 シ~ン!」 という表現を使いますよね?
私たちは 「 無音状態でも感じる音 」 があるのです。
耳鳴りの症状のある方は、この種の音が常に大きな音に聞こえてきて 日常生活に支障が出てくる程なのです。
耳鳴りはなぜ起こるのでしょうか?
現在、その正確な原因は分かっていません。
鼓膜は“音”という複雑な振動を中耳にある耳石に伝える役目が在ります。耳石はその音を拡大して、内耳に送ります。
内耳で音は電気信号に変えられて内耳神経を通じて脳に送られます。脳の聴覚野がその信号を受けとって、私たちは音の認識をするのです。
鼓膜(聞こえる) →①→ 中耳(伝える) →②→ 内耳(電気信号に変える) →③→ 脳(分かる・認識する)です。
耳鳴りはこの様な 音の振動以外のものが伝道路 ( ①②③の通路 ) のどこかに現れて、影響を及ぼしている可能性も考えられます。 炎症や内耳内の環境の変化などです。
中耳は耳管で鼻空(鼻)や咽頭(のど)とつながっています。
鼻空や咽頭などから細菌に感染しやすいなど、少なからず影響を受けやすい場所です。
人によっては気づかないうちに 「 感染・炎症・治癒 」 を繰り返しているかもしれません。
これらから、耳鳴りは 内耳の粘膜のちょっとした炎症でも生じると考えられますし、慢性的な悪環境( 感染・炎症・治癒 の繰り返し )によって耳鳴りを起こしやすい環境になっているとも考えられます。
また、受容器が振動以外の間違った刺激をひろっている可能性も考えられます。気圧の変化などです。
天候の移り変わりが激しいと ( 例えば低気圧と高気圧の変わり目など ) 耳鳴りが強くなると感じる方が多いようです。健康な方でも新幹線に乗ってトンネルを通過したり、飛行機に乗ったり、プールに潜ったときなどにも 閉塞感や耳鳴りを感じることがあると思います。
他にも、精神的に大きなストレスがかかったり疲れが蓄積したりしている状態も、同様に閉塞感や耳鳴りを起こしやすいと考えられます。
この様な様々な原因によって内耳に許容範囲を超える変化が起こると、受容器はこれらに過剰に反応して余分な情報を脳に伝えてしまうと考えられます。
この「 余分な情報 」 が実際に無い音なのに聞こえてしまう耳鳴りなのです。
耳鳴りがあって聞こえづらいですが、聞こえているということは聴覚神経の傷害ではありません。
聴覚の過敏状態、もしくは過剰に興奮した状態と考えられます。
症状が 環境・状況 によって変化 ( 軽くなったり、酷くなったり ) していて、手術や慢性的な炎症などで形質が変化していなければ改善の余地はあります。
形質変化があれば、症状の変化は無いでしょうし、最悪 「 聞こえない 」 こともあるからです。
反応点治療では、過剰に興奮した状態を引き起こしている場所を触診によって特定していきます。
また中耳は耳管を通じて鼻空や咽頭などから細菌に感染しやすいなど影響を受けやすいことから、風邪の治療領域である 肩から頸部、咽喉、鼻、目、そして耳の付け根を中心に治療していきます。
また、自律神経を整え、免疫力を上げ内耳環境をよくするために、能力の低下している内臓を検索して治療を加えていきます。
治療の際には先の尖った鍼だけでなく、こどもに使う「ローラー鍼(小児鍼)」などが有効です。
治療中に使用しますが、もちろんセルフケアにも使えます。
使い方や場所などは指導いたしますので、 ご自宅でのケアにお勧めします。
まずは、鍼灸治療やローラー鍼などの継続的な刺激を繰り返し行なうことによって、気にならない程度にしていきましょう。人によっては結果が早かったり遅かったりしますが、あきらめないで粘り強く続けることが大切です。
この様な治療によって耳鳴りを抑え、症状の出にくい身体を作っていくことが出来ます。